元旦の朝はひとりで日の出を見に行きました。広島には山がたくさんありますので、前日からGoogleマップとにらめっこをして、今年はどの山に登ろうか、こっちの山は東側にもっと高い山があるから…など思案し、目的地は馴染み深くて少し御無沙汰していた場所に決定しました。
目が覚めると直ぐに薬缶でお湯を沸かし、熱い紅茶を淹れて魔法瓶に注ぎ、寒さに備えた厚着をして出掛けます。世界をひとりじめしているような夜明け前の独特な空気の中で、普段は通らない道を歩く気分は素敵でした。
目的地に着いて、紅茶を飲みながら夜明けを待ちました。東側の山が薄っすら青くなっていくのが見えます。西側の空はピンクとすみれ色に光って滲んでいました。南側は水色と藤色と綿飴の白とが蕩けるように透けていました。北側はすっかり朝の空です。
ふと、煙草を吸う人がちいさくまあるくぽこぽこと吐き出す煙を、冬の白い息で再現できないかと思い、幾らか励みましたが上手くいきません。
そうしている間に今年最初のお日様がのぼり、頭の中で、今年も宜しくお願い致しますと伝え、満足したので帰ることにしました。
厚着をしていたけれど夜明けを待つ間に身体は冷えきって、帰り道のコンビニでホットの紅茶花伝を買いました。蓋をあけたら温かさが逃げてしまいそうだから、にぎりしめた儘で歩きます。そうすると革の手袋を通して温かさがじんわり伝わるのです。すずめが、明るい朝日の中で、お正月のしめ縄飾りのお米を啄ばんでいるのを見掛けました。あいらしくて晴れやかで、元旦にふさわしい光景だと思いました。
ずんずん歩き、家に着く少し前に紅茶花伝の蓋をあけました。甘さと温かさが染み込んでいくようでした。
はてさて、改めまして、新年明けまして御目出度うございます。
わたしにも此方を読んでくださるあなたにも、本年が優しく愉快で素敵なものとなりますように。